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2021.1.17.(日)

最果ての街から

踏み出す、最初の一歩

そうこれは最初の一歩

 

重苦しい霧の朝、蒸し暑さで息絶えるカエル

月は姿を消したまま行方が分からないままでいる

棒立ちの駅、電車は来ないが誰かが何かを待っている

草いきれに滅びるレイルロード

僕の未来を教えておくれよ

最果ての灯台は何を照らす

海の果てを見て何思って暮らす

クラスメートは町を出た、

もう永遠に戻りはしないだろう

僕はここに帰ってきた、

永遠から飛び出し、永遠の中に戻ってきた、

いつだって一歩一歩が永遠に向かっている、

怒りを吐き出す小鳥をショットガンで撃ち殺す、

舞い散る羽根は風に舞い、

港の漁師たちは狼煙を上げる

僕はカレーライスを食べながら友達を待っている、

決して来ることのない友達をここで待っている、

詩を書いて暮らす生活はどうだい

とっくにハーブ畑は枯れ果てた

ほのかに香りは残っている

遠い昔から呼ぶ声がする

 

悲しみには形式があるらしい

感動は型を通過する儀式さ

涙の通路を、僕は知ってる

水たまりに映る夕焼け、その道を通るのさ

それは僕にとっては大切なものだった

ただそっと身震いして、僕は水たまりに足を突っ込む

 

高らかに放たれる大きな声

聞こえのいい言葉

やせ細る言葉

吹き荒れる言葉

今日もまた一人死んだ、なに どうってこたあない

すぐにみんな忘れるさ「忘れないでおこう」などと口にしながら

毎日繰り返されるのは

ちっぽけな、ほんのちっぽけな生への自殺

こんなことでは揺るがない、最果ては揺らぐことはない

岬から蜃気楼が見えるかい

遠く離れた外国の街のおぼろげな影

ユートピアってのは「どこにもない」って意味なんだ

それを求めた者の愚かな死など考えるだけ無駄なこと

勝手にそうなった、はじめからそうだった、それだけのこと

平和な最果ての町、蜃気楼はもう消えて跡形もない

 

それにしても降り積もる雪にも似た、夏の暑さよ

突き刺すような陽光にも溶けることなく

降り積もっていくものがある

春は通過駅、フツーは行き、帰りがある道

何度も見たような景色は二度と立ち寄ることのない場所

ここは最果ての駅、そう、これ以上どこにも行けない

空を飛ばない、あの子の胸に突き刺さることのない中央線はもう心の中にしかない、

蟻の行進を踏みつぶして、ミミズをちぎる

痛みを知らない子供時代と、痛みを知りすぎた晩年のホットサンド

リフレインは醸成され、僕は永遠の機械運動に組み込まれる

ライムは握りつぶす、僕はレモンが好きだから

レモンのいれもん、それは火をつければ爆弾

退屈な毎日を粉々に破壊する、もちろん自分も木っ端みじん

降り注ぐ血の雨、砕け散る肉片、要らない身体も痛みを感じるらしい

肝心かなめの椎間板、強迫性神経と接触する

誰の役にも立たん声と掃いて捨てるほどの言葉

脈絡も捨てる、そんなもの必要ないとうそぶく

 

干からびた地面が嵐の夜を待っている

がれきの山の頂上に僕は住んでる

永遠機械が軋んだ音を立て胸を張る

僕は飲めもしない強い酒を一人あおる

君も随分変わったねえなんて言われながら

気付いてないみたいだが、変わったのはあんたの方さ

その顔を見ていると吐き気がするんだよ

思いながらも僕は口ごもる、唖のように押し黙る

百万言を費やしても一歩も前に進めないなら

閉じた貝のように海の底で砂を吐いて過ごそう

水面に揺れる岬の灯台を見ながら

 

最果ての海岸線は耐えがたい美しさ

もうこれ以上どこにも行かなくていいんだという

諦めにも似た安心感で意識が混濁

耳をつんざくのは蝉の大合唱

昔見た美しい夢にぼくらは復讐されるだろう

寺山修司の遺言

肌は夏の日射しに焼かれて

存在の輪郭は消滅する

ぞんざいな人格を証明する

往来を行ったり来たりするだけの日々、ザッツオーライ

今日も明日も砂浜に海水を撒く

しかるべき生活の戦利品

逃げたウサギのしっぽはもう遥かかなた

ファンタジーの世界の住民票

僕はどこかになくしてしまったみたいだ

 

岬の灯台、白亜の騎士のような威厳をそなえて

僕をためすように光り輝いている

背後には紺碧の大海原

貝になって砂を吐き出す毎日を送る者たち

誰が彼らを責められようか

それどころか賞賛に値する存在

そこにいてくれてありがとう

礎(いしずえ)がなければ踏み出せない

踵は高らかに鳴り響き、世界をおどろかす

価値があるのは最初の一歩だけ、走り続けるなどできはしない、

走り出し続けることだけが僕らに与えられた希望のかけら

一個だけ、言い忘れたことがある気がする

それが何かはわからない、

踏み出す、最初の一歩

二歩目は足が勝手に前に出るから気にしない

飽き飽きしてる希望の光が、また雲間から射し込む

そう、これが最初の一歩

永遠に向かう、終わりの始まり。

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