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2014.6.10.(火)

終着駅

僕は海辺の終着駅のそばに住んでいる。

終着駅。これ以上どこにも行けない、最終目的地なイメージ。旅の終着駅。人生の終着駅。骨を埋める場所。人生を終える場所。何か色々考えてみるけれど、どうもあれだ、ポジティブなイメージが湧いてこない。どうもすごろくで言ったら、もう上がりのような状態であって、ここにたどり着いてしまった人間は、他の人間がまだ人生を右往左往しているのを尻目に、じっと待っていなくてはならない、そんなイメージ。

それでも僕はこの終着駅から、いつも旅に出る。駅のホームの目の前は、漁港で、魚市場があり、突堤の先の灯台も見える。その灯台に見送られ旅に出て、戻ってきたら真っ先にただ今を言うのは灯台だ。

この駅を、僕は十数年くらいほったらかしにして生きてきた。十数年前も、今と同じくホームからは灯台が見え、吹く風は潮の匂いがしていた。駅舎は新しくなり、鉄道の運営会社も変わったが、海辺の終着駅は、覚えている限り30年くらいは、海辺の終着駅であり続けている。おそらくは、僕が生まれる以前から、ここは海辺の終着駅であっただろう。

僕はこのほとんどこの終着駅しか知らないが、日本中、いや世界中に無数に終着駅がある。僕はよく、北極圏に住むエスキモーや、山奥で熊を追うようなマタギの人たちの生活を想像するが、鉄道の終着駅だけでなく、この世界には、駅舎なき終着駅に、誰も知りもしないような土地に、確かに生きる人がある。

ここがどこかは関係ない。僕はたまたまここで、あなたはたまたまそこで、確かに今日も生きている。

これ以上どうしようもないような、海辺の終着駅から、僕はいつも旅に出る。

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