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2017.4.17.(月)

夜に吼える

前回のブログの続きを。

横浜のライブの翌日は、東京吉祥寺で松波哲也の企画ライブだった。2016年の12月に続き、東京での企画は2回目になる。福井では最近でこそ控え目にしているものの、頻繁に企画を打っているが、東京ではまだ2回目。僕の、僕らの理想はいつも「時間と空間を越えたい」ってところにあるんだと思う。遠く離れていても、離れている気がしないというか…実際音楽ってそういうものに他ならないような気がする。じゃなきゃ60年代に活躍したビートルズが未だに人の心を捉えたり、地球の裏から発信された音楽が自分のもとに届いて自分の人生にとって重要なものになるはずがない。現実問題は色々あるとして、そこを何とか越えていきたい、それは願いから行動となって形になる。

この企画は元々、僕が本間章浩さんとライブをしたいがために組んだものだ。福井に本間さんが来られる時にはライブハウスから誘いは受けていたものの、いつも他でライブしていたり都合がつかなかった。僕はライブハウスのブッキングに関しては、ある意味巡り合わせだと思っている。自分からライブハウスに「誰々と一緒にやらせて下さい」と言えない訳じゃないが、しかるべき能力を持っていてしかるべきタイミングが来たなら、巡り合わせのように共演が決まるものである。とは言っても僕が本間さんほどの人と共演できる資格があるとは別に思っていない訳だが、今回の場合は巡って来ないなら自分から機会を作ろうと思ってオファーさせていただいた。巡り合わせはあるが、自分から掴みに行くこともある。

会場のsutekinaは、以前の自主企画でもお世話になった場所。女性店主が経営する、オシャレで居心地のいいカフェバー。こんな男臭い、しかも汗が飛び散りそうなライブをここで開催するのもどうかと思ったが、実際のところはそういうギャップもまた面白いのではないだろうか、同時にこの3人なら場所は関係ないんじゃないだろうか、という思いもあったので、ここsutekinaで開催させてもらった。

 

1番手はアベシ。アベシとも付き合いが長くなってきた。アベシがベースボーカルとして在籍しているtoxilasはまだ存続中だが、僕がバンド一寸笑劇に在籍している時からの付き合いで、もう10年行かないまでも大分古い間柄になってきているはずだ。最初の出会いは高円寺にあった、今はなきライブハウスGEARあたりだったように記憶している。バンド時代は度々顔を合わせてはいたが、お互いの在籍するバンドのいちメンバーとして接し、そこまで個人的な距離は近くなかったような気がする。初めて個の歌うたい同士として顔を合わせたのは、2014年8月の四谷アウトブレイクだった。そこで開催された『四谷のわ』という弾き語り企画で、出演者の一人としてアベシがいたのである。その時の様子http://t-matsunami.com/blog/525/

それから後も新潟で偶然対バンになったりして、その後福井で開催している『裸の魂』にも来てもらった。アベシの持っている刀は、回を追うごとに鋭くなる。まるで諸国を放浪して回るサムライのような雰囲気を持っている。今回の『咆哮の夜』でも僕が観たことのあるアベシの過去最高のライブを更新した。

1番手のアベシがセットアップした空気がなかなか凄まじいものだったので、2番手の僕はどうしようかと出番前いろいろ思いを巡らせたが、考えても仕方ない、正攻法で正面突破だ!と気持ちを決めて臨んだ。自分はどうだったか?自分でそれを言うほど野暮なことはない。ただこれ以上のライブはこの日はできなかったと思うし、僕から見た客席の皆さんは、いい顔してたと思うな。自分の最後の曲では本間さんにもリードギターで加わって頂いて、楽しかった。

トリは本間さん。本間さんとの出会いの日をイメージしてつけたライブタイトルだったが、この日はみんなが自分の思いを咆哮の声に乗せていたし、誰がどういう順番でも良かったと思う。だがやはり本間さんである。全身を擲つかのようなライブに、会場が呆気にとられているのがよくわかった。凄いものを見ると、人間笑ってしまうことすらあるようだ。この日の本間さんは、40分ステージということで、激しい曲だけでなく、ロマンチックなイメージの曲も映えていた気がする。まるで1本のストーリーのように、胸に迫ってきた。会場のリアクションも確かなものだったと思う。僕としても僕の旧知の仲間に本間さんを観てもらえて嬉しかった。歌い終わった後には、床が汗で水たまりのようになっていた。これがすべてを物語る。

ライブが終わった後は間に合わなかったけど会場に駆けつけてくれた人もいて、そういうのも含めて最高の夜だった思う。本間さんは夜の街に消え、僕らは花見に行った。

東京を離れて4年半くらいが経とうとしていた。東京在住時には度々訪れていた井の頭公園の夜の桜が、まるで夢のように僕には映った。時間や空間が、絶対ではないという瞬間が、僕にも増えてきた。この日の花見に一緒に連れ立って行った彼らは、僕にとってそういう存在になってきたということだ。幻想的な夜桜を見ながら、寒いのか暖かいのかわからない微妙な気候で、およそ現実感がないムードの中、缶ビールを飲んだ。あの時のような、時間を越えたあの日のような、そんな錯覚に陥った。が、確かにあの時とは違う。もう僕はあの時の僕じゃない。酒でぼやけた脳みそが、そんなことを考えていた、ようだ。

 

翌日に続く。

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